前回の記事では多摩ニュータウンを例に20,30代の入居が増えていることについて書きました。若い世代の流入によって、長年課題とされてきた高齢化が自然に解消されるかもしれません。
とはいえ、現時点で高齢化率が高いのは事実です。しかし、団地がなぜ高齢化したのか、その背景をたどると、高齢化は必ずしもネガティブな現象ではないことが見えてきます。
何十年も団地に住んでいる方に話を聞くと、必ずといっていいほど「こんないいところ、出ていきたくない」という言葉が返ってきます。家賃の理由もあるとはいえ、団地は“仕方なく住む場所”では決してありません。
UR都市機構の前身、日本住宅公団のOBの方によれば、当初は入居後15年ほどで戸建てや民間マンションへ移り住むと想定していたそうです。しかし実際には、高齢になるまで数十年住みつづける人が多く、当時の関係者にとっては想像もしていない結果だったといいます。
団地の間取りでは二世帯居住が難しいため、親世代が「こんないいところを出ていきたくない」と住み続ければ、子ども世代は団地を出ざるを得ません。こうして高齢世帯の比率が増え、自然と高齢化が進むことになります。

一方で、子どもが巣立ち、老夫婦には家が大きすぎると感じて引っ越すタイミングで団地を選ぶ人も少なくありません。家賃が手頃で保証人が不要のUR賃貸は、新居として魅力的な選択肢です。駅から多少遠くても、通勤の必要はなくなり、商業施設や医療施設は徒歩圏内にそろっています。高齢期の暮らしとして十分な利便性があるのです。これも団地の高齢化を押し上げる要因ですが、メディアが語るような悲観的な状況とは大きく異なります。
つまり、団地の高齢化とは、住まいとしての団地の“住み心地のよさ”が生み出した結果でもあるのです。
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